昨日までは普通だった言葉。
いつも通りの指示。
長く身を置いてきたはずの場所。
それらが突然、他人事のように思えてしまうことがあります。
理由は分からない。うまく説明もできない。
ただ、「以前と同じではいられない」という感覚だけが残る。

この違和感は、気まぐれでも反抗心でもありません。
それは、長いあいだ模倣によって成り立っていた状態が、
静かに終わりを告げようとしている合図なのかもしれません。
模倣から始まる社会生活
多くのサラリーマンは、最初から自分の考えを軸に働いているわけではありません。
入社後まず行うのは、会社の空気を読み、上司の指示に従い、周囲のやり方を覚えることです。話し方、判断のタイミング、仕事の進め方。そうしたものを観察し、真似ることで、組織の一員として機能するようになります。
それは不自然なことではありません。むしろ、社会で生きるうえで極めて自然な行為です。
ミラーニューロンという仕組み
この「自然な模倣」を支えているのがミラーニューロンです。
他者の行動を見たとき、あたかも自分が同じ行動をしているかのように脳が反応する神経の仕組みで、学習や社会適応に深く関わっています。
私たちは意識しないまま、この仕組みを使って集団に馴染み、役割を理解し、周囲と歩調を合わせてきました。

うまく回っているように見える時期
模倣がうまく機能しているあいだ、仕事は大きな問題なく進みます。
指示は理解でき、求められる役割も把握できる。周囲から見れば「安定している」「扱いやすい」存在です。本人にとっても、特別な疑問を抱く理由はありません。
多くの人が、長いあいだこの状態で会社生活を送ります。

ふと生まれる違和感
しかし、ある時から説明のつかない感情が現れます。
指示や方針に対して、以前のように自然に受け入れられなくなる。強い反発ではないものの、納得できない感覚が残る。ただ、心が動かないのです。
これは、模倣によって保たれていた均衡が揺らぎ始めた兆しとも考えられます。
無意識に働いていたミラーニューロンが、これ以上の同調を拒み始めた状態。筆者はこれを「ミラーニューロンの反乱」と呼んでいます。
反乱の先にあるもの
この違和感が積み重なった結果、会社を離れる選択をする人もいます。
その後の道のりは決して平坦ではありません。迷い、立ち止まり、試行錯誤の時間が続くことも多いでしょう。それでも、時間をかけて自分なりの価値観や働き方にたどり着く人もいます。

模倣の終わりは、破綻ではない
模倣は、社会で生きるために欠かせない能力です。
しかし、それだけに頼り続けることはできません。理由の分からない違和感や不満は、壊れた兆候ではなく、「次の段階へ進む準備が整った」という合図である可能性もあります。
あなたの中のミラーニューロンは、いま何を受け入れ、何を拒もうとしているでしょうか。



