統合失調症をご存知でしょうか?
その症状があらわれた方から呼び出だされて直接お話し聞いてきました。
わたしの頭がおかしくなった時のことを聞いてください
風が福左右衛門は普段は老人ホームの施設長をやっています。
「施設長!入居者のMさんが話があるので部屋まで来てほしい、と呼んでますよ」
と、女性の介護士から声がかかったのです。
呼んでいたのは入居者のMさん。
89歳の男性です。
腰が引けながらも(苦情かな?)お部屋を訪ねることにしました。
「そこにお座りになって私の話を聞いてください」
と静かに切り出してきました。
「この前、私の頭がおかしくなってしまった時のことを聞いてください」
と神妙な感じで迫ってきます。
「???」
どうやら苦情ではなさそうです。
1か月くらい前、身におきた異変を聞いてほしいというのです。
予想(苦情)とは違う展開で戸惑いましたが腰をおろしてじっくり話を聞くことにしました。
棺桶、スイスのチューリッヒ、夜警
視線を微妙にずらしながらMさんは語りだしました。
蝉の声が充満する真夏の暑い日。
目の前には古びた大きな鉄筋コンクリートの四角いビルが見える。
その建物玄関から棺桶が2つ運びだされている。
すると黒い詰め襟の学生服を着た生徒50人位がどこからともなくサッさーと集まってきて棺桶を囲んで悲しんでいる。
声はまったく聞こえない。無音。
見えている光景は大きなガラスのような透明の壁の向こう側でおこなわれている。
すると一瞬で目の前の場面が変わったのだそうです。
スイスのチューリッヒに来ていた。
風景も現実だし、地名も具体的だ。
険しい山が両袖から迫ったとても綺麗なお花畑の中にいる。
「死ぬんだったこういうところがいいな」と思った。
するとまた場面が変わった。
この老人ホームの夜勤だというが、見たこともない男性が現れた。
すると私に夜勤をしろと命令する。
「嫌だ」と断ったが「言うことを聞け」と威圧的に迫ってくる。
仕方なくやることにした。
やらされたのは夜勤というより夜警だ。
深夜の住宅街の路地を暗い懐中電灯をもってやっとの思いで一周した。
相当の距離を歩いて疲れ果て膝まずいた。
秘密を打ち明けるように語ってくれたのです。
今度は私としっかり目線を合わせて
「私の頭はおかしくなってしまったのでしょうか?」
と相談してきたのです。
私たちは自分の置かれた立場を考えながら話を統合している
この話の内容、統合失調症の症状そのものです。
三つの短い物語は単語や文法は正確なので内容は理解できます。
でも、何を言っているのかわからない。
現実的では無いのです。
会話というのは場所と時間と話す相手に合わせます。
自分がいる場所、時間、私という相手の事を無視した話は現実的ではなくなってしまいます。
場所、時間、自分の考え、相手がとう思うか、など私たち一瞬に統合して(まとめて)話をつくっています。
この統合ができなくなる(失調)のが統合失調症です。
寝ている時に見る夢というのはMさんが語ったように支離滅裂で場面が展開していますよね。
本当は誰でも頭の中は支離滅裂、夢見状態なのです。
それを今、自分か置かれている立場を考慮(統合)して話を作って相手に理解してもらっているのです。
私たちは知らず知らずにこんな努力をしながら社会生活をしているって、いうわけです。
統合失調症の一時的症状は問題ないみたいです
さて、頭がおかしくなってしまったか、と心配になっているMさんです。
統合失調症の症状が一時的にあらわれただけで、今は普通に会話できているので問題ないと説得しました。
「そうでしょうか~」
と納得まではいけませんでしたが、今は症状もなく静かな毎日をおくっています。
統合失調症を通り越したところにイノベーションがある!
突然ですが「イノベーション」という言葉を聞いたことありますか?
ウィキペディアでは次のような説明です。
物事の「新結合」「新機軸」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」(を創造する行為)のこと。
「新結合」ですよね。
「新統合」と同じです。
もしかしたらですよ。
イノベーションってやつは統合失調症の症状のようにバラバラになったものを統合するときに生まれるんじゃないでしょうか。
支離滅裂になるまで分解して結合した時にイノベーションが生まれるのじゃないでしょうか。
自分の社会的立場や相手の立場など考えに入れていてはイノベーションは生まれません。
もっと深い所をさまよわないと生まれないのだと思います。