秋は、名所ではなく「気配」を探しに行くもの
紅葉の名所と呼ばれる場所が、少し苦手になってきました。
人が多く、写真を撮るというより「撮らされている」感覚になるからです。

そんな気分だったある秋の日、
「有名でなくてもいいから、秋を感じられる場所へ行こう」
そう思い、カメラを持って出かけました
向かったのは
東京都青梅市成木にある、成木山 安楽寺。

都心からそれほど遠くないのに、
時間の流れが明らかに違う場所です。
紅葉にはまだ早かったみたいです。ハナミズキの葉は一足早く赤くなっていました。
青梅・成木という土地が持つ、静かな時間
安楽寺のある成木地区は、青梅市の中でも山あいに位置します。
集落へ向かう道は次第に狭まり、
景色はコンクリートから木と土へと変わっていきます。

この「移行」がすでに小旅行。
安楽寺で見つけた、派手ではない“秋
正直に言うと、紅葉はまだ本番前でした。
けれど、境内をゆっくり歩いていると、
確かに秋は、静かに存在していました。

- ハナミズキの葉が、うっすらと赤く色づき始めている
- 苔むした屋根と石段が、湿った光を受けている
- 本堂の周りを囲む木々が、夏とは違う影を落としている
どれも「映える」景色ではありません。
でも、カメラを構えると、不思議とシャッターを切りたくなる。
それはきっと、
この場所が“時間を積み重ねてきた寺”だからだと思います。
カメラは特別なものじゃなくていい
この日使っていたのは、
特別高価な機材ではありません。
日常的に使っている、ニコンのコンパクトデジタルカメラです。
大事なのは、
・何を撮るか
・なぜ撮りたいと感じたか
木の古さ、寺の静けさ、
人の手が入った自然と、入らない自然の境界。

それを意識しながらシャッターを切ると、
写真はただの記録ではなくなります。
「紅葉の名所」でなくて、よかった
もしこれが有名な紅葉スポットだったら、
きっと気づかなかった景色があります。
- 色づく前の葉の微妙な変化
- 建物と自然の距離感
- 寺が持つ、信仰の時間

安楽寺は、
「秋を見に行く場所」ではなく
**「季節が静かに変わるのを感じる場所」**でした。
もう一度、季節が進んだ頃に
境内を後にする時、
「もう少し秋が深まったら、また来よう」
自然と、そんな気持ちになりました。

次は、
葉がもっと色づいた頃かもしれないし、
あるいは冬の入口かもしれません。
特別な観光地でなくてもいい。
こうした場所を、カメラと一緒に歩くこと。
それが私にとっての、撮影小旅行です。



